一般的なお手入れ

着用前の注意

まず、「きもの」や小物を準備する時は、必ず、手を洗ってからしましょう。身体の表面部分で一番汚れているのは、手の平と足の裏と言われています。自分の身体から出ている脂分はもちろん、いろいろなものを持ったり触ったりしていて汚れた手で、「きもの」や小物を扱うとシミの原因になります。だから、必ず、手を洗いましょう。

そして、取り出した「きもの」や小物は、直接、畳の上やジュウタンの上に置かず、文庫紙の上やたたみ敷き紙の上に広げましょう。特に、着付けは、たたみ敷き紙の上でしましょう。これは、目に見えない埃や汚れから「きもの」を守るためです。

お化粧は、「きもの」を着る前に済ませておきましょう。着用後のお化粧は、シミの原因になります。また、重要ポイントですが、必ず、着付けをする前に、必要なものがすべて揃っているか確認してから、着付けに入りましょう。「きもの」をはおってから足袋を履いたり、「きもの」の裾を引きずって、腰紐などを取り出しにいくことは禁物です。すべて、シミの原因になります。

着付けのときの注意

自分で着付ける場合は、必ず、手を洗うようにしましょう。また、着付けてもらう場合は、お願いして、再度、手を洗ってもらいましょう。美容室などでは、髪を結った手のまま着付けに入る先生が多いようです。髪を結うときに使った整髪料は、アルコールなどを含んでいるので、シミの原因になります。嫌な顔をする先生もいらっしゃいますが、自分の「きもの」を守るためです。必ず、手洗いをお願いしましょう。

また、先ほども述べたように、必ず、着付けは、たたみ敷き紙の上でしましょう。どんなに綺麗に見えても、畳の上やジュウタンの上、床は、シミの原因になる汚れでいっぱいです。畳やジュウタン、床に直接「きもの」が触れないように注意しましょう。

ちなみに、着付けのプロと呼ばれる方々でも、このような注意を怠ったために、お客様の「きもの」にシミを付けることが多々あります。しかし、お客様に申告せず、そのまま見て見ぬフリをする方もいらっしゃるとか・・・。そのようなことから、ご自分の「きもの」を守るためにも、手洗いとたたみ敷紙は、絶対に主張して下さい。

変わり結びをするときに、輪ゴムを使われる美容室の先生がいらっしゃいます。通常の状態では、一日で輪ゴムが化学変化をして、「きもの」などに悪影響を及ぼすことは、ほとんどありませんが、写真撮影などをする場合に、スポットライトなどを浴びたりするときは、注意して下さい。輪ゴムの部分がスポットライトの熱で溶けたり、化学変化を起こしたりして、取り返しのつかない状態になることがあります。だから、着付けてもらっているときに、その旨を話し、輪ゴムなどを使わないようお願いした方がいいと思います。

内側からの汚れにも注意しましょう。汚れは外から付くだけではありません。実は、長襦袢のシミや黄変の原因として最も多いのは、自分の身体から出る汗なのです。汗といえば、夏と思われがちですが、最近では、冬でも暖房が効き過ぎていたりして、汗をかくことがあります。また、自分では気付いていなくても、人間は通常1日に1.8?の汗をかいていると言われます。夏だけではなく、1年を通しての汗対策が必要といえます。

汗をかきやすいところに、ボディパウダーをはたいておくのも1つの方法です。白く浮かないものなら、首回りにも安心して使えます。香りも比較的早く消えるので、香水などをつけても香りが重なることはありません。

汗が一番気になるところといえば、脇の下です。汗を抑え、汗臭さを消してくれる制汗・デオドラント効果のある制汗剤の使用をお勧め致します。スプレータイプやロールオンタイプなどの様々な種類があります。自分に合ったものを1つ探しておくのも大事なことです。

また、下着にも注意しましょう。汗を吸いやすく、しかもサラッとして気持ちのよい晒か綿縮の肌襦袢の使用をお勧めします。化繊やガーゼ類は暑いし蒸れることがありますので、汗かきの方は、避けた方が無難です。夏には、麻地も涼しくてお勧めします。また、特に夏用の長襦袢としては、麻や海島綿がお勧めです。

そして、汗のかきやすい箇所には、あらかじめ汗取りを当てておくとかなり汗ジミを防ぐことが出来ます。晒の肌襦袢に晒木綿を重ねて付けておくか、身八つ口に汗取り用のマチを付けておくのも1つの方法です。自分に合った工夫をされて、「きもの」を汗から守って下さい。

もう1つの注意として、汗をかかない努力をしましょう。汗は水分の摂取に大きく関係していますので、着付け前や外出先でも普段のペースで飲まないようにしましょう。また、『慌てる』、『焦る』は、汗をかく要因になります。着付けをはじめ、道中もいつもより時間に余裕を持って行動しましょう。